フェイスパウダーとアイパレット、メイクブラシを被写体にして、春っぽいイメージでスタイリングしてまとめました。化粧品の撮影でこのセットを組んだので、スタジオ備品を使ってブログ用に撮影、解説を作りました。
このイメージカットの撮影手順を解説していきます。
目次
撮影セット、インテリア
大掛かりな撮影では「建て込み」とも言いますが、10坪ほどの私の小さいスタジオでも疑似的に部屋の一角を再現することがあります。板、壁紙、柄がプリントされた背景紙を組み合わたりしてインテリアのイメージを作ったりします。
今回は大きなベニヤ板を立てて漆喰の壁紙を垂らして壁をつくり、四角い枠にトレーシングペーパーを貼った「枠トレ」とカーテンで窓際を再現しました。化粧品を置く台として珪藻土の板とタイルを貼ったパネルを使っています。
セッティング図
窓際の光の再現を目標に、ストロボを3台使ってライティングをしました。
こちらがセッティング図になります。
太陽の位置は右側にあり(ストロボ1)、窓から直射日光が差し込んでいるとします。奥の方からは、回り込んだ屋外からの外光が窓とカーテン越しの柔らかい光(ストロボ2)となって室内に入ってきていると想定しています。太陽は一つですが、2つの窓からの外光を2台のストロボを使って再現しています。さらに室内の明かりとしてストロボ3を設置しました。
太陽光をストロボで作る
天気に左右されること、太陽の位置をコントロールできないこと、刻々と影の位置が変わってしまうことなど、本物の太陽は綿密にスタジオでセッティングして物撮りをするときには向きません。もちろん例外もありますが、特に小さいものを撮るときはストロボで太陽光を作ります。
そして太陽光をストロボで再現するときには、まず太陽の位置と、どのように光が回っているかを具体的にイメージする必要があります。
また、直射日光の光は「点光源」になるため、なるべくストロボの光源を狭くするために真ん中に穴を開けた遮光用の段ボールを付けています。光源の面積が広くなるにつれて被写体の影の輪郭がぼやけてくるので、直射日光を再現するにはなるべく点光源に近づけないといけません。これは被写体からストロボを遠くに離すことによって対応もできます。
屋外で直射日光の影がどれだけ長く伸びても輪郭がくっきりしているのは、被写体から見た光源が小さく見えること、被写体から光源までの距離が離れていることと関係しています。よって、ストロボで直射日光の影を再現するとき、被写体が大きく、かつ影を長く出そうとするほど、より大きなスペースと大光量のストロボが必要になります。(大光量=遠く離れても光が届くということです)
ライティング
■直射日光としてのストロボのみ
フェイスパウダーのコンパクトの鏡が黒くなってしまうため、映り込む部分にレフ板を立てます。
レフ板の白い面を映り込ませることで鏡が明るくなり、テーブルを囲うようにレフ板を置いているため、被写体に当たる光を起こす役割もあります。若干影も薄くなりました。
■カーテン越しの外光としてのストロボのみ
逆光だけだと色が正しく出ないのと、タイルの反射も激しくなるため、全体的に不安定な色になってしまいます。(今回目指すイメージとは違いますが、こういうのもありといえばありです。)
■直射日光と外光をミックス
これで太陽光を2箇所の窓から室内にうまく取り込んだ印象になりました。
■天井バウンスのストロボを1台足す
まだ少し影が強いかなと思ったので、室内の明かりを足すように、左手前から天井に向けてのストロボを追加しました。
レンズの焦点距離は120mm前後、絞りはボケ具合を確認しながらF5.6と決め、それに合わせてそれぞれのストロボの光量バランスを調整していきライティングが完成します。
C-PLフィルター
ライティングは完成しましたが、奥側からの逆光の影響でタイルの表面の反射が汚く色も正しく出ておらず、コンパクトの左に落ちている影も欠けてしまっています。そこでC-PLフィルター(偏光フィルター)をレンズに装着して、反射をコントロールし色がしっかり出るように調整しました。
C-PLフィルターの有無を並べて比較するとわかりやすいと思います。
C-PLフィルターは風景写真や屋外で使うことが多いですが、本来の「反射のコントロール」という効果を活かしてこのように物撮りで使うこともあります。
イメージ撮影について
イメージカットの撮影では、スタイリングはもちろんのこと、セット組み、ライティングなど1枚にとても時間をかけて撮影しています。イメージ撮影は「センス」と思われがちですが、光、シチュエーションやシーン、商品イメージ、季節、背景や小道具などあらゆる要素を総合的に捉えながら、これまで培ってきた技術や知識を駆使して1枚の写真に落とし込んでいます。