イメージ撮影のスタイリング


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イメージ撮影のスタイリング

2019年1月13日

商品撮影では、商品のみを撮影する単品写真の他に小物・小道具を使って空間演出(スタイリング)を施して撮影するイメージ写真があります。

イメージ写真は、文字通り商品のイメージや雰囲気、印象、世界観、コンセプトなどを1枚の写真の中で表現します。
画面の中で、主役となる商品の色や形、向き、配置の仕方を元に、周りに置く小物の色や、物の輪郭から出てくる線や図形がどのように作用するかを考えながらスタイリングしていきます。

今回は撮影時にどのようなことに気を配りながらスタイリングしているのかを説明したいと思います。カメラの話ではなく、どちらかといえば「デザイン」の話です。


まず、こちらはストックフォト用に撮影した写真ですが、これを撮るときに意識していた5つのポイントを順番にみていきます。

食品撮影

黄金比・黄金螺旋

イメージ撮影
主役となる被写体、つまり視線をどこに集中させるかを考えます。背景をぼかしたイメージを狙うのであれば、ピントをどこに合わせるかということですね。
これはデザインでもよく用いられる黄金比(1:1.618)や黄金螺旋を意識することが多いです。
2:3の横位置のフレームの中で、バランスのいいところに主役と脇役を配置します。
特に意識することなく、なんとなく感覚でバランスを取っていても、結局あとから分析すると黄金比におさまっているということもよくあります。

交差する線

イメージ撮影
写真の中では必ず「線」が存在します。被写体となる物体の線を元に、それを画面上にどのように構成するかを考えます。
この場合、テーブルクロスの模様の横線と、コーヒーカップやキャニスターの縦の直線を意識しています。
少し動きを出すために斜めに傾け、縦線と横線のバランスを整えます。
撮影時は見えている画像の上に頭の中で直線、曲線や、四角、円などの図形を重ね合わせて、基本的な方向性を確認してから本格的にレイアウトや配置を調整していきます。

物の位置

イメージ撮影
ヨーグルト、スプーン、コーヒー、キャニスター、パンの5つの物の配置のバランスを取ります。
これは人によって見方は変わるかもしれませんが、なんとなくM字でジグザグになるよう意識をしました。M字以外にもWやS字を描くように物を配置することもよくあります。そうすることで、バランスを保ちながら動きをもたせることができます。

配色のバランス

イメージ撮影
この写真のベースカラーとなるのは食器やテーブルクロスの白〜薄いベージュの色で、その上にベージュよりも濃い薄茶色系の色、アクセントカラーとして赤と緑が入っています。

似た系統の色同士、強い色同士が画面の中で重なったりどこかに偏ると、そちらに視線が引っ張られてしまいます。物自体の配置との兼ね合いも考えながら、うまく主役の被写体に視線をひきつけつつバランスよく色が散らばるようにしています。

強い色である赤が画面の右半分に偏っていますが、左上にコーヒーの黒という重い色があることによって、色の重心のバランスが保たれています。

消失点からの広がり

イメージ撮影
上で説明した線や配置、色は、見方を変えるとこのようになります。画面の奥のグリーンを遠近法でいう「消失点」に見立てて、そこを起点に扇型にバランスよく広がるような線の見え方、物の並び、色の配置にもなっています。
このように、斜めのアングルから遠近感をつける写真の場合、消失点も意識する必要があります。

スタイリング、つまり写真のフレームの中で「デザイン」をすることにおいて意識する5つのポイントを書きましたが、なんとなくスタイリングを進めていってうまくいくときや、2、3のことを意識するだけでいいときもあります。
色の配置が決まったと思ったら、よく見ると線や物の配置が散らかってしまったり、1つのことを直すと他のことが崩れてくることもよく起こります。

また、全部規則正しくなってしまっては逆に印象が薄くなってしまうこともあり、意図的にどこかの線や位置をずらしたり「遊び」を入れて、アクセントを付けることもします。

カメラアングルやレンズの焦点距離によって写り方も変わるので、小物や背景を入れ替えながら、物を動かしながら、カメラの位置を動かしながら…という繰り返しになります。


他のケースも紹介していきます。
正方形の写真で商品を真ん中(日の丸構図)に配置した例です。

Maamプレミアムランジェリーさま)

イメージ撮影

イメージ撮影
こちらは使用する小物があらかじめ指定されていました。撮影時に主に意識したことは、色の配置、バランスと、扇形に広がる線です。扇形やV字型の線や配置もよく使います。

この写真は奥行きがない平面なので少し違いますが、上で述べた「消失点」が発想の元で、このような線を取り入れる場合は必ず起点を明確に定めるようにしています。ちなみにこの扇形の起点は、フレーム底辺を1:1.618の黄金比を使って分割した場所になります。

メインの商品に対して、直線的な形をしたもの(冊子と鏡と香水の瓶)が目立つので、その直線が画面の中でどう見えるのかよく考えます。

このとき、レイアウトと同時にブラジャーとネックレスの位置関係にも気をつけています。演出小物なのでレイアウト優先でネックレスを画面の左右やブラジャーの下側に置くのもいいですが、実際にそれらを身に付けるときの位置関係にして、ネックレスを垂らす形にしています。
こうすることで、物撮りでありながら少しでも使用時のイメージを想起できて、演出小物のコンセプトも活きてくると考えたからです。
香水は全身で使うものなので、ブラジャーの下側に配置しても違和感はありません。

形ばかりにこだわるだけでなく、小物の意味も考えながらスタイリングしていきます。

色については、商品と同系色の色をバランスよく散りばめながら、左上と右下の対角線の端に同系色の緑を配置しています。


次も主役を中心に配置した日の丸構図ですが、少し違った工夫をしています。

レーベンドールさま)

商品イメージ撮影

イメージ撮影
ボタニカル原料のシャンプーで、商品の周りには実際に成分に入っているハーブを配置しています。

この写真は一見日の丸構図で周りにさらっと小物を散りばめたように見えますが、この、「散らかっているようでまとまっている」というのも相当気を使いながらスタイリングしています。

気づきにくいかもしれませんが、緑の葉っぱが単に主役を囲む円になっているのでなく、左上から右下へゆるやかに流れるような曲線をイメージしながら、主役の商品を含む3つの縦の線も右下がりにすることで、散乱感がありつつもまとまりがあり、ちょっとしたレイアウト上の「遊び」を取り入れる、というバランスを取っています。
そしてこの縦の線によって画面が4分割のグリッドに分けられ、中心の縦長の被写体に安定感を与えます。

色の散らばりについては、上下左右の対角線の端に同系色を配置したり、適度に距離を置いて配置することで、なるべく中心の被写体を引き立てるように気をつけています。


これらのテクニックは商品写真だけでなくコース料理の撮影にも応用することができます。
コース料理の撮影は実は難易度が高く、食器の形や大きさ、高低、料理の盛り付け方、向き、順番など変更ができない部分が多く、さらに、被写体のほとんど全てのものを主役扱いできちんと見えるようにしなければいけません。そういった制限がある中で最大限の工夫をします。

(屋台風居酒屋 櫻家さま)

コース料理撮影

コース料理撮影

四角い形をした皿が多いため、基本的な直線の向きを斜め2方向に決め、それにグラスやボトル類の縦の線が入ってきます。(赤線)
丸い皿もその線の方向を邪魔しない位置に置きます。山盛りのキャベツはあえて縦線に馴染むように配置しています。

そして食器で構成している2方向の斜め線から大きく外れないように、料理がジグザグ線を描いて見えるように並べています。(青線)
と同時に、色も適度に散らばるように配慮しているため、かなりの時間をかけて並びを決めています。

食器同士が重なる部分が「すき間」に見えないよう、下に物を敷いて浮かせたり、ミリ単位で位置を調整しながら、ときには解けないパズルをしている気分になることもあります。


自由に描ける絵とは違って写真は現実の物体を相手にしているため、思うようにスタイリングが進まない場合もありますが、何も考えずに試行錯誤するよりも上記のポイントを振り返りながら進めると効率よく解決の糸口をつかむことができます。

とはいっても、スタイリングには答えが1つということは決してありません。規則性を無視した写真も全然アリです。
見る人、選ぶ人によって感じ方もそれぞれですし、写真だけで使われる場合や、写真の上に文字やロゴなどのデザインがされる場合、写真が配置される文脈によって正解も異なるため、実際は色々なバリエーションカットを押さえておきます。

物撮りや広告等に携わるフォトグラファー、カメラマンというのは、カメラやレンズ、ライティングの知識や経験だけでなく、こういったスタイリング、デザイン分野の引き出しも必要なのです。